肩の痛み

肩に痛みを生じる原因は首・肩・背中の筋肉に由来する肩こりが代表的で、肩こりは猫背・前かがみなどの姿勢や首・肩・背中の筋肉が緊張する長時間作業などで起こります。

しかし肩こり以外に頚椎疾患（詳細は＜首の痛み＞参照）、変形性肩関節症・石灰沈着性腱板炎・五十肩・腱板断裂などの肩関節疾患、高血圧（詳細は＜高血圧＞参照）・肺がん・急性心筋梗塞・胆石症・胆のう炎などの内科疾患、眼精疲労や緑内障などの眼科疾患などさまざまな病気が原因で肩の痛みを生じるために注意してください。

原因により治し方が大きく異なるので、単なる肩こりと自己診断してストレッチやマッサージをする前に病院で痛みの原因を突き止めましょう。

変形性肩関節症

変形性肩関節症は肩関節に痛みや可動域制限などの症状が起こる病気です。痛みは肩を一定方向に動かすと出現します。肩を動かした際にゴリゴリと骨がこすれ合う音を感じる場合も少なくありません。原因は変形性膝関節症（詳細は＜変形性膝関節症＞参照）や変形性股関節症（詳細は＜変形性股関節症＞参照）など他の変形性関節症と同じで、関節軟骨の変性・磨耗です。

軟骨が劣化するために肩関節の骨同士が直接こすれ合って痛みや骨の変形を生じたり、加齢、過去の骨折、腱板断裂、肩を酷使するスポーツなどで軟骨が劣化したりします。治療は痛み止めを中心とした薬、肩関節へのヒアルロン酸注射、温熱療法、リハビリ・筋トレなどの運動療法などです。

石灰沈着性腱板炎

石灰着性腱板炎は肩関節の痛みや運動制限を生じる40〜50代の女性に多い病気です。夜に突然激痛が生じる場合が多く、痛みによる不眠が珍しくありません。発症後1〜4週間症状が強い急性型、1〜6カ月程度の症状が続く亜急性型、運動時痛や運動制限が6カ月以上治らない慢性型に分類されます。

原因は肩関節にある腱板などにリン酸カルシウムが沈着し炎症を起こすためです。痛みが強い急性期は沈着物の吸引、患部の安静、痛み止めの内服、ステロイド・局所麻酔薬の注射などで治療します。痛みが軽減すれば患部を温める温熱療法やストレッチ・筋トレなどの運動療法を行いますが、なかなか治らない場合は手術が検討されます。

五十肩（肩関節周囲炎）

五十肩とは肩関節の痛みや運動制限が起こる50代に多い病気です。痛みによる不眠や運動制限で服の着替えができないなど日常生活に支障をきたす症状が出る場合も少なくありません。主な原因は加齢により肩関節内の骨・軟骨・靱帯などが劣化して肩関節周囲に炎症を生じるためですが、病態は個人差があります。

似たような症状は石灰沈着性腱板炎や腱板断裂などでも起こるので、治療前には正確な診断が欠かせません。痛みが強い時期の治療は患部安静が基本で、三角巾や痛み止めの薬を使う場合もあります。痛みが軽減すれば患部を温める、ストレッチ・筋トレなどの運動をするなどして治療し、それでも改善に乏しい場合は手術が検討されます。

腱板断裂

腱板断裂は肩関節内の骨と骨の間にある腱板が損傷する病気で、60代に多く男性・右肩に多い特徴があります。肩に痛みを生じ不眠になる場合も珍しくありません。五十肩と症状が似ていますが関節運動が固くなる拘縮や運動制限は少なく、痛いながらも肩挙上はできる場合がほとんどです。

原因の半数は外傷ですが、残りは特にきっかけがなく発症し加齢による腱板劣化の関与が想定されています。診察では肩挙上が可能か、拘縮の有無などをテストしたうえでステロイド・局所麻酔薬・ヒアルロン酸などの注射で治療します。全部の腱板が断裂する場合は多くありません。そのため残った腱板を強化するリハビリも大切です。治りが悪い場合は手術をします。